『変な家』変な間取りが暴く日常の闇:見逃せない奇妙なミステリー小説

オススメ本

『変な家』を知っているだろうか?
3月に映画化もされた雨穴氏のミステリ小説である。
読んでみたらとてもおもしろかったので、ぜひ読んでほしい。

ということで、本記事では『変な家』の魅力を徹底解説し、あなたに「『変な家』読みたい!」と思わせようと試みる。

*中盤までのネタバレを含みます。ご注意ください。

『変な家』概要

購入を検討している家の1階に謎の空間がある

 

物語は著者雨穴氏のもとにこのような相談がくるところからはじまる。

雨穴氏は作中でもオカルト系記事を扱うライターであり、よくオカルト関連の相談を受けていた。

例えば、2階から謎の音が聞こえるなど心霊現象が起きる物件の相談だ。

しかし今回は間取りについての相談。

雨穴氏は謎の空間に心ひかれたが、間取り図は満足に読めないので知人の設計士 栗原氏に協力を要請した。

 

「確かに変な家だ」

 

栗原氏は間取り図をみてそう思ったらしい。しかしそれは雨穴氏が相談をうけていた謎の空間のことではない。謎の空間はもともと収納スペースにするつもりだったが、扉をつける予算がなく壁で囲んだのだろうとのことだった。こういうことはままあるらしい。

栗原氏が”変だ”といったのは謎の空間がある1階ではなく2階の間取りだった。

 

子ども部屋を見てください。何か気づきませんか?

 

そういわれ2階にある子ども部屋に注目するとたしかにおかしい。

その子ども部屋には扉がふたつあったが、窓が一つもない。そして備え付けのトイレがあった。まるで独房のような子ども部屋に雨穴氏は絶句し一つの可能性を口にする。

 

「…虐待ですか…」

 

栗原氏はその可能性もあるとしながらも、間取り図のおかしな点の指摘をつづけた。

子ども部屋とは対照的に窓が多く開放的な両親の寝室、2階にある開放的すぎるシャワー室と窓のない閉鎖的な浴室。

さらに別々に見ていた1階と2階の間取り図を重ね合わせたとき、新たな仮説が浮かんだ。

1階にあった謎の空間。

その空間が子ども部屋と窓のない浴室を繋ぐ位置にあることに2人は気づく。

この空間を通路と仮定すると、いままで”変だ”と思っていた間取りがあるストーリーでつながる。

そのストーリーとは「窓のない浴室に誘い込んだ客人を子どもが部屋から秘密の通路を通り殺していた」というストーリーだった。

 

つまりこの家は殺人のためにつくられた家だということだ。

 

雨穴氏はこの仮説を記事にし、公開した。

少しでも家の真相に近づきたいという思いがあったからだ。

その行動は思わぬ人物を引き寄せる。

「記事で公開している家に心当たりがある」という女性が雨穴氏に連絡を取ってきたのだ。

雨穴氏はさっそくその女性にあった。

そしてその女性は「自分の主人があの家の住民に殺されたかもしれない」と告げた。

しかし彼女の夫が亡くなった時期にあの家はまだ建っていなかった。

 

雨穴氏が指摘すると彼女はバックから間取り図を取り出す。

「これは、あの家の住民がかつて住んでいた可能性のある家の間取り図です」

2つ目の”変な家”が雨穴氏の前に姿を表す。

 

2つの家に見出される奇妙な共通点。

発言のところどころに矛盾を含む怪しい女性。

そして女性が提示する「本当に人が死んだ」という第3の変な家。

 

これらの謎は最後にある呪われた一族へとつながっていく。

個人的な感想

以上が『変な家』の概要だ。

『変な家』の魅力は、「意味がわかると怖い話」的な構造にある。
一見何の変哲もない描写が、解説を聞くことで恐ろしい意味を持つ。
読者は、自分の認識の甘さに気づかされる。

この作品の推理パートは、物的証拠よりも状況証拠に基づく。
論理的な推理よりも、直感的な洞察が重要となる。
奇抜なトリックを求める読者には物足りないかもしれない。

しかし、会話主体の構成により、読みやすさは抜群だ。
難解な表現は少なく、スラスラと読み進められる。

この小説を読んだ後、あなたは何気ない間取りを見ても「何かおかしいかも…」と思ってしまうかもしれない。
それくらい強烈な印象の作品だ。
そして、自分の認識の甘さに気づき、世界を見る目すら変わってしまうかもしれない。

以上、私なりの視点で『変な家』の魅力を解説してきた。

この記事で興味を持った方はぜひ『変な家』を読んでみてほしい。

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