今回紹介するのは芸術とミステリーが織りなすミステリー小説 『リボルバー』(原田マハ著)だ。
この小説は、フランスのオークション会社に持ち込まれた一丁のリボルバーから画家ヴィンセント・ヴァン・ゴッホの最期の真実を読み解くという展開で、読者を魅了する。
ところどころに挟まるゴッホの生涯と作品の解説も読んでもらいたい部分の一つだ。
私は西洋画ではゴッホのものが一番好きで、代表作のひとつ「ひまわり」が展示されているSOMPO美術館に通いたいがために、SOMPO JAPANの就職面接を受けたほどだ。(結果は不合格)
もちろん『リボルバー』はミステリとしても面白いので、ミステリー好きにも読んでいただきたい。
本記事では、あなたが少しでも『リボルバー』に興味を持ってもらえるように魅力を余すことなく紹介していく。
『リボルバー』概要
「見ていただきたいものがあるのですが…」
パリのオークション会社に勤務する 高遠冴 のもとを初老の女性が訪れた。
どうやらオークションへの出品が目的らしい。
女性が手にしていたのは錆びついたリボルバー式拳銃だった。
ガンマニアの同僚いわくそんなに貴重な拳銃ではないようだ。
ではガラクタかとオークション会社の全員が落胆したところで女性がいう。
「このリボルバーはヴィンセント・ヴァン・ゴッホのリボルバーです」
女性は自分の持ち込んだリボルバーがヴィンセント・ヴァン・ゴッホを撃ち抜いたリボルバーだという。
ヴィンセント・ヴァン・ゴッホといえば「ひまわり」や「星月夜」で有名な画家だ。
また、「自分の耳を切る」「拳銃自殺をする」など狂気に飲まれた人間としても有名だった。
冴は大学でゴッホとその友人の画家ゴーギャンについて研究していたため、その事はよく知っていた。
そのゴッホが使った拳銃が今目の前にあるというのだ。
オークション会社の一同は女性の持ち込んだリボルバーを一度預かり、リボルバーが本物かどうかの調査を始めた。
結果はすぐにでた。
博物館の職員によるとオークション会社に持ち込まれたリボルバーは偽物とのことだった。
一度博物館に出品された「ゴッホのリボルバー」とは錆や結婚の位置が異なるということだった。
オークション会社の面々は落胆するも、「ゴッホのリボルバー」がもともと展示されていたという食堂へ向った。
その食堂には実際にゴッホが住んでいたという。
そこでリボルバーの話しを聞くうち、ある男性の一言に一同は衝撃を受ける。
「あぁ、彼女がもっているリボルバーでしたらおそらく”ゴーギャンのリボルバー”ですよ」
短い期間ではあるがゴッホと共に住み、創作をしていたゴーギャンの名前がでる。
冴は考えた。
あのリボルバーがゴーギャンのものであるというなら何に使われたのか?
そしてある結論を導いた。
もしかしてゴッホは自殺ではなくゴーギャンに殺されたのではないか?
もしかしたらゴッホを殺したリボルバーこそが今回持ち込まれたものなのではないか?
さらにある疑問が浮上する。
そんな歴史的な意味をもつリボルバーを持ち込んだ女性は何ものなのか?
美術史を覆す仮説と女性の謎を検証すべく冴とオークション会社の面々は調査を再開する。
ゴッホとゴーギャン、天才と呼ばれた二人の間に何があったのか?
リボルバーを持ち込んだ女性は何者なのか?
オークション会社一同が最後にたどり着く真実はどんなものなのか?
個人的な感想
以上が『リボルバー』の概要だ。
本作の特徴はゴッホの生涯に関する描写が詳細である点だ。
ところどころで語られるゴッホのエピソードは物語としても面白い。
それらの専門知識も「大学でゴッホとゴーギャンについて学んでいた」という設定の冴がオークション会社の同僚に教えるという形で物語に自然に溶け込んでいる。
著者の原田マハ氏が美術館での勤務経験もある方なので美術史の部分だけでも一読の価値はあるだろう。
単純にミステリーを楽しめるだけでなく、ゴッホという人物とその作品の背景知識も知ることができる一冊となっている。
『リボルバー』は、芸術とミステリーの融合が生み出した作品だ。
この小説を読んだ後、あなたはゴッホの絵画を新たな目で見ることができるだろう。
芸術の持つ力と、それを取り巻く人間ドラマに、心を揺さぶられる請負だ。
ぜひ読んでいただきたい。
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